マイクロボトックス
マイクロボトックス
マイクロボトックスは、ボツリヌストキシン製剤をごく低濃度に希釈し、皮膚の浅い層(真皮〜表在性の筋線維)に多数の点で少量ずつ注射する治療法です。眉間や目尻に行う通常のボトックス治療(表情筋の深部への注射)とは異なり、表情をつくる筋肉全体の動きを大きく止めるのではなく、皮膚表面に近い部分にはたらきかけることで、毛穴・皮脂・肌のキメ・軽度のたるみなど、シワ以外の幅広い肌悩みへのアプローチを目的としています。
効果は施術後数日〜1週間程度から徐々に現れ、通常のボトックス治療と同様、効果の持続は一般的に3〜4か月程度とされています。毛穴・皮脂に関する効果は4か月程度持続したとする報告がある一方、効果の程度・持続期間には個人差があります。
ボトックスビスタ®(アラガン・ジャパン株式会社)
通常のボトックス治療と同じ、厚生労働省承認のボツリヌストキシン製剤を希釈して使用します。施術はすべて医師が行います。
適応外使用について
ボトックスビスタ®の国内承認は65歳未満の成人における眉間・目尻の表情ジワに限られています。毛穴・皮脂・肌のキメ・赤み・軽度のたるみ等を目的としたマイクロボトックスは、国内における適応外使用(オフレーベル使用)です。診察時にリスク・代替治療について十分にご説明したうえで、実施の可否をご判断いただきます。
強い筋肉のはたらきによる深いシワ(眉間など)や、皮膚のたるみが強い場合には、マイクロボトックス単独では十分な効果が得られないことがあります。診察のうえ、通常のボトックス治療・糸リフト・フェイスリフトなど、他の治療との組み合わせをご提案することがあります。
マイクロボトックスは海外を中心に臨床研究が行われており、以下のような効果が報告されています。いずれも学術論文・メタアナリシス(複数の臨床試験を統合した解析)に基づく一般的な報告であり、当院独自のデータではありません。効果の現れ方には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではない点にご留意ください。
2024年に発表された、10件の臨床試験(計153名)を統合したメタアナリシスでは、皮脂分泌抑制・毛穴サイズ縮小・赤み(紅斑)低減・浅いシワの改善・リフト効果について統計的に有意な改善が報告された一方、肌の水分量(ハイドレーション)については改善効果が認められなかったと結論づけられています[1]。
ボツリヌストキシンが皮脂腺・立毛筋のアセチルコリン受容体のはたらきを抑えることで、皮脂分泌の低下・毛穴の縮小がもたらされると考えられています。毛穴開大のある35名を対象とした試験では、単回の施術で毛穴の見た目の改善、皮脂の減少を実感した方が多かったとする報告があります[2]。また、皮膚に直接注射する方法は、ダーマペン(マイクロニードル)で薬剤を浸透させる方法に比べて改善の程度・持続期間(4か月後も効果が持続)の面で優れていたとする比較試験もあります[3]。
真皮層や表在性の筋線維に少量ずつ注射することで、表情の動きを大きく損なうことなく、皮膚表面のなめらかさ・ハリの向上が期待できるとされています。目元・中顔面のシワを対象とした希釈濃度の比較試験では、高濃度側(1:5希釈)が、より薄めた場合(1:7、1:10)よりもシワの改善・持続の面で優れていたとする報告があります[4]。62名を対象に肌表面を機器で解析した試験では、施術90日後の時点で肌のきめ細かさの向上が確認されたとする報告もあります[5]。
下方向に皮膚を引っ張る筋肉のはたらきを弱めることで、頬やフェイスラインの引き締まった印象が得られる場合があるとされています。生理食塩水を対照とした比較試験では、ほうれい線・マリオネットラインの改善を認め、16週間効果が持続したとする報告があります[6]。頬の下垂・首まわりの改善に有効とする報告がある一方、首の強く収縮する筋肉(広頚筋)のバンド状の変化には、従来の筋肉内注射法(ネフェルティティ・リフト)の方が適するとされています[7]。中顔面のリフト感・肌質の改善についての報告もあります[8]。いずれも切開を伴うフェイスリフト等と比べて効果は限定的です。
前述のメタアナリシスにおいて、赤み(紅斑)の指標の統計的に有意な低減が報告されています[1]。
| 通常のボトックス治療 | マイクロボトックス | |
|---|---|---|
| 注射する層 | 表情筋の深部 | 真皮〜表在性の筋線維(浅層) |
| 主な目的 | 眉間・目尻の表情ジワの改善 | 毛穴・皮脂・キメ・軽度のたるみ・赤み等 |
| 表情への影響 | 対象の筋肉の動きが抑えられる | 表情の動きを比較的残しながら効果を狙う |
| 国内承認 | 眉間・目尻は承認内 | 適応外使用(オフレーベル) |
肌の状態・お悩みを医師が診察し、適応の有無、注射範囲・希釈濃度・効果の見通し・リスクをご説明します。
メイクを落としていただき、注射する範囲・ポイントを決定します。
希釈した薬剤を、極細の針で皮膚の浅い層に多数の点に分けて少量ずつ注射します。通常のボトックス治療より注射箇所が多くなります。施術時間は15〜30分程度です。
当日からメイク・洗顔が可能です。注射部位を強くこすらないようにし、当日は激しい運動・飲酒・サウナ・長時間の入浴をお控えください。
| 内容 | 料金 |
|---|---|
| マイクロボトックス(全顔・50単位) | ¥50,000 |
※マイクロボトックスは公的医療保険の適用外(自由診療)です。料金には診察料・薬剤費・施術料を含みます。
| 症状 | 頻度の目安 | 説明 |
|---|---|---|
| 注射部位の内出血・腫れ・痛み | 比較的多い | 数日〜2週間程度で自然に消退します。メイクでカバー可能です。 |
| 頭痛・頭重感 | ときどき | 多くは一過性で数日以内に改善します。 |
| 効果不十分・左右差 | ときどき | 肌の状態・皮脂量には個人差があり、期待する効果が得られない場合があります。 |
| 表情のこわばり・つっぱり感 | まれ | 薬剤が想定より深部へ及んだ場合に生じることがあります。一過性で数週間程度で改善します。 |
| まぶた・眉毛の下垂 | まれ | 通常のボトックス治療より生じにくいとされますが、薬剤が周囲の筋肉へ及んだ場合に起こることがあります。一過性で改善します。 |
| アレルギー反応 | まれ | 発疹・かゆみなどが生じた場合は速やかにご連絡ください。 |
効果には個人差があります
肌の状態・皮脂量・筋肉の発達の程度により、効果の現れ方・持続期間は異なります。すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。
[1]Rahman E, et al. Plastic and Reconstructive Surgery – Global Open. 2024.(マイクロボトックスの有効性・限界に関するメタアナリシス、10試験153名を統合)
[2]El Attar YA, et al. Journal of Cosmetic Dermatology. 2021.(毛穴開大35名を対象とした単回施術の効果に関する研究)
[3]Salem RM, et al. Journal of Cosmetic Dermatology. 2023.(皮内注射とダーマペン塗布の比較スプリットフェイス試験、20名)
[4]Salem SA, et al. Aesthetic Plastic Surgery. 2024.(希釈濃度による効果の違いに関する比較試験)
[5]Diaspro A, et al. Plastic and Reconstructive Surgery. 2020.(3Dスキャンによる肌質改善の定量評価、62名)
[6]Atwa EM, et al. The Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology. 2020.(生理食塩水対照の二重盲検スプリットフェイス試験、25名)
[7]Awaida C, et al. Plastic and Reconstructive Surgery. 2018.(下顔面・首の若返り効果とネフェルティティ・リフト法との比較)
[8]Sapra P, et al. The Journal of Clinical and Aesthetic Dermatology. 2017.(中顔面への皮内注射に関するスプリットフェイス試験、10名)
[9]Ng ZY, et al. Dermatologic Surgery. 2022.(2000〜2020年の文献を対象とした系統的レビュー)
[10]Kapoor R, et al. Dermatologic Surgery. 2010.(針刺し刺激自体の影響を検証したスプリットフェイス試験、10名)
上記はいずれも海外で発表された学術論文に基づく一般的な報告であり、当院独自の臨床データではありません。効果の程度・持続期間には個人差があります。
投与後の避妊について
本剤投与後、女性は少なくとも2回の月経周期を経るまで、男性は少なくとも3か月間、避妊が必要です。妊娠をご希望の方は事前に医師へご相談ください。
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