
外傷(擦り傷、切り傷、打撲、やけどなど)
外傷(擦り傷、切り傷、打撲、やけどなど)
けがはどのような場面でもその危険性が潜んでいます。転倒や家事、思わぬ事故などその危険性をゼロにすることはできません。血を見ると冷静さを保てなくなってしまうのが普通です。我々は創傷治癒(きずを治す)の専門家です。どのようなけがでもお気軽に相談ください。
まず傷が治るには、
止血期(血を止める)→炎症期(異物や細菌をやっつける)→血管新生期(新しい血管と肉芽ができて傷がふさがる土台を作る)→上皮化期(新しい皮膚がはってくる)→成熟期(きずあとが目立たなくなってくる)
と正しいステップを踏むことが必要です。特にお子さんで多いのが転倒し、顔にけがをしてしまいます。顔のけがは体の中でも比較的よく治る部位ではありますが、傷あともきれいに治したい場所です。病院にかかるかどうか迷われる方も多いと思いますが、以下に病院を受診したほうが良い場合について簡単にお話します。
キズが治るにはまず血が止まるのが大前提です。しばらく抑えたりしても血が止まらない場合は縫合処置が必要となる可能性があります。
切り傷だけではなく擦り傷においてもキズが汚染されていると処置をしてあげる必要があります。感染だけではなく、砂利や砂がキズに残ってしまうと、外傷性刺青(いれずみ)と言って、傷あとが目立つ結果になってしまう可能性があります。
特に顔などできれいに治したい場合、受診したほうが良い場合があります。顔は特に傷の治りが良い場所ではありますが、早期に治療することでよりきれいに治すことができる可能性があります。
主に転倒によって皮膚の表面が削られ、赤くなったり出血する浅いけがです。多くの場合、地面で皮膚が削られることが多いため、汚れが入りやすく、感染のリスクがあります。またキズに石やアスファルトなどが残存してしまうと外傷性刺青と言って、色素が残ってしまいます。これらを予防するためにも、まず流水でよく洗って異物や汚れを除きます。汚れがひどい場合、局所麻酔を使ってしっかりと異物を取り除くことが必要です。その後は軟膏や保護材を使って湿潤環境を保ち、自然治癒を促します。治った後のケアも重要で、日焼け等の刺激によって炎症後色素沈着(PIH)が生じてしまうことがあります。しっかりとしたケアが重要です。
刃物やガラス、スライサーなどで皮膚が鋭く切れた状態です。傷が深いと皮膚の下の組織や血管、神経に影響することもあります。血管にまで傷が及んでいるとなかなか血が止まらないことがあります。この時やってはいけないこととして、指の付け根をゴムで縛ってしまうことです。指の付け根をゴムで縛ってしまうと、指全体に血液が届かなくなってしまい、指全体が壊死(腐ってしまうこと)してしまう可能性があります。指で押さえても血が止まらない場合は医療機関を受診することが必要です。特にスライサーで切ってしまった場合、皮が取れてしまうことがあります。この場合皮膚を取っておいて一緒に受診されることをお勧めします。場合によってはとれてしまった皮を再びもとに戻すことができることがあります。
転倒やぶつけた衝撃で皮膚の下にある筋肉や血管が傷つき、内出血や腫れ、痛みが出る状態です。表面に傷がないことも多いです。まずは冷やして腫れを抑え、安静にします。数日経過して腫れが引いてきたら、軽く温めて血流を促すこともあります。強い腫れや痛みが続く場合は骨折の可能性もあるため受診するようにしましょう。
転倒・打撲・切創などで顔に傷を負った状態です。顔は目立つ部位のため、わずかな傷でも気になりやすく、傷あとが残ると精神的な負担にもなります。止血や洗浄を行い、必要に応じて縫合やテープ固定をします。形成外科では傷あとが目立たないよう細かい縫合法や処置を行います。傷の経過に応じてテープや軟膏、必要に応じて美容的な修正も検討する場合があります。
日常生活で多い外傷は熱傷(やけど)です。やけどは熱により皮膚にダメージが生じた状態を言います。熱の高さ(温度)が高いほうがもちろんダメージは大きいですが、低い温度でも長時間ダメージが与えられるとそれもやけど(低温熱傷)となります。やけどの治療で最も大事なことは、直後によく冷やすことです。やけどした直後はまだ皮膚に熱が残っており、そのままにしてしまうとどんどんダメージが蓄積していってしまいます。なるべく早くに熱のダメージを減らすことが重要です。冷やし方で最も有効なのは流水で冷やすことです。時間は20分~30分程度が理想です。急いで病院に行くよりも流水で冷やすことのほうが重要です。直後にしっかりと冷やしてから医療機関を受診してください。やけどはやけどの深さで3段階に分けられます。1度熱傷は皮膚が赤くなるだけ、2度熱傷は水泡ができる、3度熱傷は皮膚が黒色に変化するものです。浅達性2度熱傷までは傷あとにならずに治癒します。深達性2度熱傷~3度熱傷では傷あとになって治ります。熱傷のリスクは感染、と傷あとです。やけども場合によって手術が必要となる可能性があります。なるべくきれいに治すには適切な処置が必要となります。当院でもやけどの手術は可能ですが、入院が必要な場合は大学病院と連携して治療に当たらせていただきます。
猫や犬、人を含めた動物によって咬まれた傷は、見た目以上に汚染されています。人の歯には1㎠あたり1億個以上の細菌がいるといわれており(Loesche, W. J. 1997;Clin Microbiol Rev)、他の動物でも同等以上の細菌がいるといわれています。見た目に大した傷ではなくとも、咬み傷は感染しやすく、対処が必要な場合があります。傷に細菌が入ると、数日かけて傷の中で細菌が増えます。けがをしてから3日~5日程度が最も症状が出やすい時期になります。傷の周りが赤くなり、腫れと痛みがひどくなります。傷から膿が出る場合もあり、ひどくなると熱も出ます。医療機関を受診しても感染を100%防げるわけではありませんが、早期の対応が重要ですので迷ったら受診されることをお勧めします。
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